第33章 七海健人 夫婦交換しよ?-壱-
「えっと…」
「驚くのも無理ないわ。
だけどあなたの話を聞いてからずっと考えていたの。
夫に浮気されたくないから嫌々付き合ってたけど…
あなたなら信用して任せられるんじゃないかって」
愛しているから結婚して、
けれども性生活で問題が生じてしまった。
先輩の言っていることはわかる。
…だけど。
「それって…先輩も…陽と…?」
「私は夫の精力旺盛から逃れたくて頼んでいるの。
それに陽くんはゲームばかりなんだから何もないわよ」
「そ…です…よね…」
陽はセックスよりもゲームが好き。
一緒のベッドに横になってもただ隣に寝ているだけ。
悲しくなるほど何もしてこないんだから…。
よし、と覚悟を決めて先輩夫婦の客室に入る。
布団を敷かれた襖が全開になっているのを意識すると
手前の和室でお酒を嗜んでいる健人さんと目が合う。
「…あぁ…そうなりましたか」
「えっ…?」
「ひとまずお座りください」
目の前に座っている淡々としてお堅い話し方の人が
精力旺盛=絶倫だとはとても信じられない。
むしろ淡泊、もっと言うならノンセクシャルに見える。