第1章 東卍童話パロ ヘンゼルとグレーテル
「ちっとも太らねーじゃねえかよ」
檻の様子を確認したムーチョは、不満そうに苛立っています。
「…もういい。そのまま食う」
そしてついにしびれを切らし、蘭と竜胆という部下を呼んで二人を痛めつけるよう命令しました。
「大人しくさせろ」
「オイオイまじかよぉ、兵隊までいんのかよ」
捕まった状態ではどうすることも出来ません。スマイリーは弟だけでも逃がしたくて、彼に呼び掛けました。
「逃げろ、アングリー」
「そんな…スマイリー置いて逃げれるワケないじゃん!」
兄が心配で動けずにいるアングリーの元へ、魔女の手下の竜胆が早速近付いてきました。
「足折るぞオラァ!」
タックルを食らい、身動きの取れない状態で足を折られてしまいます。
「あああァァ!」
「アングリー!!」
蘭に警棒でつつかれていたスマイリーのほうへ移動した竜胆は、今度は檻越しに彼の腕を折りました。
「うがああぁ!」
「ス…スマイリー!!」
「いい音ー」
手下達は楽しそうに抵抗出来ないスマイリーをいたぶっています。
「ばか…やめろよぉ……にいちゃんが…壊れちゃうよ…」
兄への一方的な暴力に、アングリーの目には涙が溜まっていました。
「よしっ…泣け!泣けアングリー!」
このままでは二人ともやられてしまいます。起死回生を狙って、スマイリーは弟にそう呼び掛けました。ついにアングリーは泣き出します。
「ぴええぇぇん…もうやめでよぉ、ばかあぁ…!」
「おいおい、マジか」
「キモ…」
そのギャン泣き具合に若干ヒいている手下達。アングリーがフラフラと側へ近付いて行くと、竜胆は再びタックルで迎え打とうとしました。
「もう一本いっとくかー?」
「竜胆…一旦離れろ!」
アングリーの異様な気配に気付いた蘭の警告もむなしく、目にも止まらぬ速さで攻撃を受けた竜胆が倒されます。続いて流れるような動きで、彼は瞬く間に蘭をも倒してしまいました。
「泣いたコイツはオレの百倍強えんだよ!」
勝った弟を見て、スマイリーが誇らしげに笑みを浮かべました。
そこへムーチョがアングリーの行く手をはばんで来ます。