第1章 東卍童話パロ ヘンゼルとグレーテル
「何コレ?宝物?」
「うわっ、コイツはヤベーなあ。こんなモン隠し持ってるってことは…」
「お前らここで何してんだ?」
急に背後から声が聞こえ、二人はびくっとして心臓が跳ね上がります。そこには例のおばあさんが冷たい目で兄弟を見下ろしていました。
「ムーチョ!?」
「勝手にうろちょろしやがって…」
おばあさんは人が変わったように怖い目つきで睨みます。それもそのはず、なんとムーチョの正体は悪い魔女だったのです。
魔女のムーチョはスマイリーを捕まえると、リビングに置いてあった檻の中に放り込みました。
「よいしょおおぉぉ!」
「スマイリー!!」
そして檻に鍵をかけてしまいました。
アングリーが心配そうに兄の元へ駆け寄ります。スマイリーは腰をさすりながら起き上がりました。
「くそぉこんな檻にぶち込みやがってよお…」
「大丈夫なの!?」
「問題ねえよ。それよかお前こそ気をつけろ」
今度はアングリーがムーチョに腕を引っ張られ、無理やり台所へ連れていかれます。
「ソウヤ、テメーはナホヤの飯作りだ」
拘束はされなかったものの、指示に背いたら何をされるか分かりません。
「痩せすぎだから飯食わして太らせろ。オレの晩飯にするからな」
「なっ…」
アングリーはムーチョの恐ろしい発言に絶句しました。魔女は人間の子供を食べるというのです。そのために、優しげなフリをして二人を招き入れたのでした。
手をプルプル震わせつつもご飯を作ったアングリーは、兄の元へ運びました。
「おー、旨そうじゃんかアングリー」
のんきな様子の兄に、小声で奴の恐ろしい計画を伝えます。
「違う…太らせて食べるつもりだよ、魔女は子供が好物みたいだ」
知らされたその内容に、さすがのスマイリーも一瞬言葉を失いますが、雰囲気を沈ませないようわざと明るい声を上げてみせました。
「こんなのはなぁ、食った分出せばプラマイゼロなんだよォ!」
「汚いなにいちゃん」
とてもまずい事になった二人。ここから出て、逃げる算段を考えなくてはなりません。
数日後、アングリーはまだご飯を作らされていました。