第4章 愛情いっぱい塩むすび
献立が出来上がったら巻き物に書いていく。私の時代ならパソコンでも印刷でもパパッとメニュー表を作るんだろうけど江戸ではそうもいかないので全部手書きだ。
筆屋さんで買った筆で丁寧に書いていく。修正液なんてものはなく失敗したら一からやり直しなので集中して一日中、献立表を書いた。見やすいようにイラストも添えて描き、この日は終わった。
このお店の建物は入り口出口の扉を開けるとカウンターが見える。そしてテーブル席が並ぶ。お座敷も作った。カウンターの所から見えるように台所があり、その奥が私の寝泊まりする住居だ。幸いにも階段を取り付けてもらい手すりもつけてもらった2階には倉庫を作った。食料倉庫と歯ブラシの倉庫がある。お米は重いので台所の方に保管してある。カウンターの隣が勘定する所だ。
お店の中に厠いわゆるトイレも併設した。男子用の厠と女子用の厠と二つ作ることができた。私の時代でも飲食店にトイレはあるもんね。勿論、手を洗う洗面台もつけさせてもらった。
そして肝心なのは夏場はどうするかということ。暑い中、お客さんに来てもらっても返って蒸し暑いだけ。私の時代ならクーラーや扇風機が効いてるんだけどな。と思った。クーラーは無理でも自然の風を利用してシーリングファンを天井に取り付けてもらい暑さを凌ぐことにした。建築屋の人に仕組みを説明して木製で作ってもらったのだ。冬は寒さ対策として火鉢を炊くことで落ち着いた。
お店が完成してくるとなんだかワクワクしてくるし、楽しみが増える。のれんは自分で作成して準備も整った。
幸いにも吾郎さんの実家が米農家なのでお米は分けてもらえることになった。
翌日は吾郎さんと綾さんと一緒に吾郎さんの米農家を訪ねた。吾郎さん曰く農家はお兄さんが継いでいるとのことだった。私の話をしたらぜひうちのお米を使って欲しいと言われた。艶々のお米を見て私は心が高揚した気分だった。吾郎さんの米農家で定期的にお米を届けてくれることになった。
後の食材は休みの日に私が買い足すことで決まった。
献立表は作ったけどまだまだ作りたいものも沢山あるし、挑戦したい料理もデザートもあるので試作品ができたらその都度、お客さんや吾郎さん達に味見をしてもらうのもいいかなと思った。
これからが再スタートで頑張り時だ。精進して頑張ろうと意気込んだ。
