第2章 削り節おむすび(おかか味)
私は筆屋に向かった。
「いらっしゃい。」
お店の人が挨拶してくれた。
「あの、筆を見て行ってもいいですか?」
「どうぞ。」
私はお店に並んだ筆を手に取ってまじまじと観察した。
毛先と持つところがどうやって繋がっているのか知りたかったからだ。
まず、持ち手の上の部分に大きな穴を開けて毛先を通してるんだろうか?うーん。
ということは歯ブラシを作るのにいくつか穴を開けて毛先を差し込む必要がある。しかも毛先が取れないようにしっかりつけないといけない。歯ブラシは水に濡らすはずだから丈夫な毛先じゃないといけない。筆は文字を書くためのものだから毛先がとても柔らかいが、歯ブラシはそうもいかないだろう。
筆の毛先は一方方向に束ねてあってまとめた刺してあるような感じがした。他の筆も見てみたけど同じような作りなんだと思った。
それからひと月が過ぎて吾郎さんから山からの許可が降りたと知らせが来た。私は綾さんがくれた編みかごと貸してくれた鎌を手にして山に登った。今は命綱や杖なんかもあるけど、この時代はそんなものはない。登るのはいいにしても降りる時に慎重に降りないといけない。
山の奥に進むと竹藪が見えてきた。
私はこのひと月の間に色々、交渉したり借用書を書いたりしてきた。そして今日この日に竹を取る。
カツカツカツと竹を切っていく。
かぐや姫でもいないかなぁなんて、竹取の翁になった気分で竹を切っているとなんだかワクワクする。
気がついたらカゴの中に竹がいっぱいになった。そこから竹を切り分ける作業になるが、それは帰宅したらやろうと思った。
山を少しずつゆっくり下りやっとの思いで町に出てきた。あとは平らな道なのでなんなく歩くことができた。そして家に戻り竹をパーツに分けて作業に取り掛かった。竹を切り分けて磨きにかかり、一本一本手作業で作るのは大変だったが、持ち手は何とか揃った。
「あとは毛先だけか。」
毛先の素材もこのひと月で色々探った。まだ小判は手に入らないので農家に出向き廃材を集めて作った渾身の歯ブラシがこうして出来上がったのは竹を取ってからまたふた月が過ぎていた。
沢山の歯ブラシができあがり、私は町の一角でようやく歯ブラシを売る準備に取りかかった。
最初は誰も見向きもしないだろうけど話術で買わせてみせると意気込んだ。