第2章 削り節おむすび(おかか味)
私は御役所の人に教えてもらった住所を手にして役所を出て歩き出した。紙に筆で場所を書いてもらいあちこちと仕事を頼みに向かうのだ。見得屋に出向いたが、おなごのする仕事じゃねぇと締め出されてしまった。諦めることなく次の仕事を探しに向かう。異風の托鉢は坊主になる覚悟はあるかと脅されたのでやめることに。羅宇屋は女手はいらないと言われてしまった。
「はぁー仕事探しって難しいなぁ。」
それでも決して諦めない。それなら損料屋をやればいいんじゃなかと思った。令和時代の何かを売れば確実に小判が手に入るんだけどそれには商品を集めないといけない。
私は必死に考えた。
「そうだ!歯ブラシを売ればどうだろう?」
吾郎さんと綾さんが私の持ってきた歯ブラシを見て驚いてくれた。似たようなものを生産すれば売れるのではないかと考えたのだ。しかし、プラスチックの部分はどうやって作ればいいのだろうか?いや待って・・・そうえばうちの物置にあるデッキブラシは竹で出来ていたはず・・・それなら竹を材料にして作ればいいのではと考えた。問題はブラシの毛先の部分だ。そこをどうやって作ろうかと考えているうちにこの日は日が暮れてしまった。
仕方なく切り上げて吾郎さん達の家に帰ることにした。
「ただいま。」
「おかえりなさい。ご飯がちょうど炊き上がったところよ。」
綾さんがにっこりして言った。
「ただいまー。」
そこに吾郎さんが帰ってきた。
「吾郎もおかえりなさい。それで穂乃果さんは仕事は見つかったの?」
綾さんが私に聞いてきた。
「それがその、色々回ったんですけど断られてしまいまして・・・そこで考えたんですけど歯ブラシを作って売ろうと思ったんです。」
「歯ブラシ?」
吾郎さんと綾さんが目を丸くして驚いた。
「はい、私の持ってきた歯ブラシを見て二人が驚いてくれたので似たようなのを作れないかと思ったんです。この時代でも歯磨きは普及してるようですし、何かで作れないかと思ったんです。私の持ってきた歯ブラシはプラスチックという素材でできてるんですけど、この時代にそんなのないですし、竹なら手に入りやすいかなと思ったんですけど、どこかで竹を切らせてくれる所とかないですよね?この時代にある山って誰が保管してるとかわかりますか?」
私の問いに二人は考え込んだ。