第2章 削り節おむすび(おかか味)
「山ねぇ・・・。」
吾郎さんが唸った。
「でもほら、昔話とかだとおじいさんが山に芝刈りにとかいうじゃないですか?あっ、わかりずらいですよね。桃太郎って話は聞いたことありますか?」
「聞いたことあるような気がするわね。はい、穂乃果さんのご飯よ。」
「ありがとうございます。」
「吾郎のご飯はこっちね。」
「ありがとうな。」
私達は今日も三人でお膳を囲んで食べた。
ご飯と漬物とお味噌汁だ。これだけでも十分にありがたい。
「いただきます。」
と言って手を合わせて食べ始めた。
「あの、話は元に戻りますけど山から竹を切ってくる場合って誰から許可を取ればいいんでしょうか?」
私は二人に聞いた。
「そりゃ、お殿様の許可が最終的には降りないといけないべ。まずは御役所を訪ねることだね。明日も俺と一緒に向かうといいよ。」
吾郎さんが漬物を食べながら教えてくれた。
「そうですか・・・あの、今って国を収めてる殿様って徳川家康様でいいんですよね?」
「そうだべ。」
私の問いに吾郎さんが答える。
「やったぁ!夢みたい・・・日本史の教科書でしか見たことなかった家康様にお会いできるかもしれないなんて。嬉しいーー!!!」
歴史マニアじゃなくても名の知れた有名な方なのだから会えたら一生の宝と匹敵するくらいだと私は思ったのだ。
「いやねぇ、殿様には滅多にお目にかかれないよ。だって俺ら一般庶民には遥か遠くの存在の方だからね。それでも会えたら幸運じゃないかい?」
吾郎さんがそう言って私に手を差し伸べてきた。
「穂乃果さんのことは俺ら二人で全力で応援してるから頑張りな!それとタイムなんとかの話も三人の秘密ってことでいいかべ?色々知られると厄介だろうからさ。今日の話は聞かせてもらったぜ。旅人ってことになってるんだろう?」
「どうしてそれをー。ああ、同じ建物の中にいたんですもんね。私の声なんか丸聞こえか。ありがとうございます!」
「穂乃果さん頑張ってね!」
綾さんも私の手を握ってくれた。吾郎さんもとてもいい人だなと私は思った。
そもそも江戸時代の人達にお世話になること自体が普通じゃない。これは国宝級の宝物だと私は思い、二人の声援を糧に頑張ることにした。