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【鋼の錬金術師】紅の幻影

第4章 錬金術師の苦悩




『そういやお前さん今、エルリック兄弟の護衛を任されているみたいじゃないか』
「大佐から聞いたんですか?」
『ああ。なかなか大変そうみたいじゃないか?』
「大変、なんですかね……」
『なんで疑問形なんだ』

他愛のない世間話。
ヒューズさんとこうして話をしている時は、自然と心が休まる。
世話焼きのお人よし。
可哀そうになるほどの。

『暇があったら遊びに来いよ』
「はい、必ず遊びに行きます」

そう言って電話を切ろうとした私だが「あ」と小さく声を漏らした。
その声を聞き逃すことなくヒューズさんは「どうした?」と尋ねた。

「あの、綴命の錬金術師のことはご存じですか?」
『綴命の?ショウ・タッカーのことか?知ってるぞ、人語を理解する合成獣の錬成に成功したって……。それがどうかしたのか?』
「いえ、その……少し彼について気になったことがあったので、調べてほしいと思って……」

後ろめたさを感じるのは、私のこのモヤモヤがただの過剰な思い込みな可能性もあるからだ。
嫌な予感というのは当たりやすくもあるが外れる場合もある。
後者である場合も否めない。
それを確かめるためにタッカーさんの事を調べたいのだが。

『タッカーはグラン准将の管轄下だからな……』
「グラン准将とお話することはできますか」
『………それはできない』
「え……?」
『殺されたんだよ』

その一言に、心臓が一際大きく脈打ちまるで鉛でも飲み込んだかのように息がしづらくなる。
グラン准将が殺された?
一体誰に。
グラン准将のことはイシュヴァール殲滅戦の時から知っているが、実力のある舞踏は錬金術師だ。
簡単に殺されるような人ではない。
そんな彼が殺されるなんてにわかに信じられない。
が、ヒューズさんがそんな質の悪い冗談を言うはずもないから、きっと事実なのだろう。


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