第4章 錬金術師の苦悩
混乱する頭は、ずっと同じことを考え続けるだけで脳の機能を全うしようとしない。
落ち着かなくては。
脳に酸素を。
一度大きく息を吸って、ゆっくりと吐いた。
先ほどよりは幾分か、冷静になれたような気がする。
ヒューズさん曰く、グラン准将が殺されたことで彼の管轄下は手続きがややこしいという。
今も彼が請け負っていた仕事を捌いたり検死をしたりと朝からバタバタと忙しいらしい。
『それに軍法会議署に努めてるつっても俺はただの一般軍人の中佐だ。詳しいことは何も知らないんだ』
「そうですか……。忙しい時にいろいろとすみません」
『気にすんなよ。……手続きなんだが、これがまた手間がかかりそうでよ。なにせあの人の管轄は広範囲でな』
「はぁ……」
『一つ一つ調べないといけないこともあるんだ。これがまた時間がかかる!』
「……!!」
『また、電話するわ。お前さんの元気な声を聞かないとな』
「今、聞いているのにですか?」
『わっはっは!!"娘"の声なんていつだって聞きたいと思うもんさ!』
ヒューズさんは豪快に笑うと、電話を切った。
中佐の立場では調べられる範囲もそこまで広くないでしょうに。
それでも彼は調べてくれると言った。
それがいつになるか分からないが、ヒューズさんからの電話を待とう。