第4章 錬金術師の苦悩
資料を読み漁る事数時間。
結局何も得ることはできず、17時を知らせる時計の音が部屋に響いた。
今日はこれで終わりか。
また明日調べればいいが、多分このままの調子では何も得ることなく終わってしまうことは明白だ。
途方もない情報収集にたった数日で辟易している私とは違い、彼等はずっと探し回っている。
諦めることもせず。
執着……というよりは、絆がそうさせているのだろう。
たった二人の兄弟、血の繋がり、家族。
もし、私にも家族がいたら、元の身体に、体温を取り戻したいと願っていたのだろうか。
「お兄ちゃんたち、また明日も遊んでくれる?」
まだ眠たそうなニーナさんがおぼつかない足取りで私達の所へと寄ってくる。
アレキサンダーもまた明日を楽しみにしているのか、頭をすり寄せて「くぅん」と甘えてきた。
「はい。また明日も来ます」
「やった!そしたら明日は、かくれんぼしよ」
隠れるのじょうずなんだよ、と先ほどまでの眠気が吹き飛んだのか、ニーナさんは太陽のような笑顔を見せてくれた。
真っ白い歯が夕焼けに照らされてキラキラと光って、なんて眩しいんだろう。
大きく手を振る彼女に見送られながら、私と兄弟はタッカーさんのご自宅を後にした。
兄弟をホテルまで送り届け、私は一度司令部の方へと足を向けた。
調べたいことが、確認したいことがある。
はやる気持ちと並行して私の足取りもまた速くなった。