第4章 錬金術師の苦悩
暫くすればはしゃぎすぎたのか体力の限界を迎えたニーナさんは眠そうな表情で私の服の裾を掴んで、頭をぐりぐりとおしつけてきた。
「眠たいですか?」
「ううん……」
小さく首を振るが、その声はどう見ても眠そうだ。
彼女を抱っこし背中をトントンとリズムに合わせてタッチングし、静かに子守歌を口ずさんだ。
――銀色の明かりに包まれて お眠り 私の可愛いお姫様
庭も草原も静寂に包まれ 羊も鳥も みな眠り
窓に降り注ぐ月のほのかな光 お眠り 私の可愛い王子様
穏やかな寝息が聞こえ始める。
ニーナさんの寝顔は天使のように可愛らしく、怖いものなど何もなく、私の腕の中で安心して眠っている姿に、幼い頃の自分と重なった。
懐かしい記憶が思い出されて苦しくなって、夢の中にいる小さい子供の身体をぎゅっと抱きしめた。
その後、私たちは家の中に戻りニーナさんをベッドに寝かせようとした。
しかし、彼女は私の服を掴んだまま離してくれなかったため、仕方なく毛布だけ拝借し資料室へと向かった。
「すごいですね……」
資料室には、個人で集めたとは思えないほどの大量の文献が置いてあった。
彼等が元の身体に戻る手がかりや賢者の石について少しでも知る事ができればいいのだが。
何冊かまとめて文献を持ってきたエドワードくんは、先ほどまで遊んでいた人とは思えないような真剣な表情で読み漁っていく。
彼のこの集中力は一体どこから来るのだろうか。