第4章 錬金術師の苦悩
――・アールシャナside――
とても怖い夢を見た。
たくさんの人の目が私を見つめている夢。
身体中から赤い液体を流して、ただ静かにじっとこちらを見ている。
時折何かを呟いていて、耳を澄ましてもその声はとても小さすぎて何を言っているのか分からない。
ただ分かるのは、彼等は私の手によって命を落とした人たちということだけ。
ごめんなさい
謝ったところで彼等の命が甦るわけではない。
それでも謝らずにはいられない。
なんて自分勝手なんだろう。
その時、後ろから肩を叩かれた。
ゆっくりと振り向くと、そこには兄の姿が。
穏やかな笑みを浮かべていて、まるで「大丈夫」と言っているような、優しい笑顔。
久し振りに兄に会えた。
夢の中でも会えたことが嬉しい。
まるで幼い子供のように兄の身体に抱き着こうとしたが、私の足はぴたりと止まり、その場から動くことができなくなった。
先ほどまでの優しい笑みを浮かべていた兄の身体は、熟成した桃のように皮膚がずるりと剥け、地面に落ちる。
むき出しになる肉も内臓もゆっくりと剥がれおち、ぼたぼたと地面に転がり、地面を真っ赤に染め上げ、鉄の匂いが鼻の奥を掠める。
骨だけの姿になった兄は、歯をカチカチと鳴らしながらけたたましい笑い声をあげ続ける。
怖い。
気持ち悪い。
逃げたい。
そんな感情しか湧き出てこなかった。
ガチガチと震える私をよそに兄は笑うのをやめて、
「どうしてちゃんと作ってくれなかったんだ」
静かにそう告げると、頭蓋骨が石膏細工を崩すように割れ、脳がずるりと溶けだして流れた。