第4章 錬金術師の苦悩
文字通り、時間も忘れてオレは資料を読みふけっていた。
5時を知らせる時計の鐘の音で我に返る。
そろそろ迎えが来る時間だ、帰り支度をしなくてはいけない。
そう思ってアルの名前を呼ぶ。
……が、返事がない。
あいつも読みふけっているのだろうか、それともどこかへ行ってしまったのだろうか。
探しにいくために、腰を上げた瞬間。
犬に飛びつかれ下敷きになってしまった。
オレの悲鳴に気づいたアルが様子を見に来たが、その方には少女が乗っている。
「資料探さねーで何やってんだ!!」
「いやぁ、ニーナが遊んでほしそうだったから」
周りに花を飛ばして和む二人は楽しそうで、アレキサンダーと呼ばれた犬もまたオレの顔を舐め尻尾を勢いよく振っている。
「ふっ……。このオレに遊んでほしいとはいい度胸だ……。獅子はウサギを狩るのも全力を尽くすと言う……」
アレキサンダーの涎で濡れた顔をハンカチで拭い、アレキサンダーをじっと見つめる。
アレキサンダーもまたオレを見つめる。
そして、
「このエドワード・エルリックが全身全霊で相手してくれるわ犬畜生めッッ!!!」
全力疾走で追いかけた。
アレキサンダーは涼しい顔で逃げた。