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【鋼の錬金術師】紅の幻影

第4章 錬金術師の苦悩





車を走らせること数分。
オレたちはタッカーさんの家に着いた。
家の中は散らかり放題だった。
埃の被った本の山、きっちんに溜まっている食器たち。
外観は立派で裕福そうなのに、家の中はそんな感じがしない。

オレの視線に気づいたのか、タッカーさんは恥ずかしそうに目線を反らした。
どうやら奥さんが家を出てから、研究や心労でなかなか家のことまでてが回らないと言っていた。
母さんも女手一つでオレたちを育ててくれた。
その結果病で倒れたから、タッカーさんの苦労は察することができた。

「あらためて、初めましてエドワード君。綴命の錬金術師、ショウ・タッカーです」
「彼は生体の錬成に興味があってね。ぜひタッカー氏の研究を拝見したいと」
「ええ、かまいませんよ。でもね、人の手の内を見たいと言うなら君の手の内も明かしてもらわないとね。それが錬金術師というものだろう。なぜ、生体の錬成に興味を?」

タッカーさんの言葉にオレはぐっと息を呑んだ。
人体錬成をしようとしたこと。
そのせいで弟の身体を自分の身体の一部を持って行かれたこと。
身体を取り戻すためとはいえ、禁忌を犯したオレたちの過ちを口に出すのはためらわれた。

「あ、いや彼は……」
「大佐」

オレは大佐の言葉を遮り、上着を脱いだ。
タッカーさんの言う事はもっともで自分のことを隠して人のことを知ろうとするのは錬金術の掟のそむくことになる。


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