第1章 三人の錬金術師
「何か?」
「あんたさ、3年前に会ったことあるよな。オレが国家資格取りに中央司令部に行った時……」
「はい、いました。よく覚えていますね」
「……会ったというより、視界に入ったって言った方が正しいのか?」
オレンジジュースを飲みながら彼は彼の記憶を辿る。
3年前のことは覚えていたか。
でも、あの日のことは覚えていないみたいだ。
それでも、私のことを認識してくれていたのなら、今はそれでいい。
「はい、オレンジ」
「ありがとうございます」
店主からオレンジを受け取り、ストローに口をつけた。
余程の喉が渇いていたらしい。
一度に半分以上を飲み干してしまった。
「いい飲みっぷりだね、嬢ちゃん」
「喉が渇いていたんです。あと、軽くつまめるものも下さい」
「あいよ」
朝のリオールは活気が良かった。
働く大人、家事をする主婦、駆けまわる子供たち。
そんな彼らの目は、鎧の彼に釘付けになっている。
その時、店に設置されたラジオから男性の声が流れ始めた。
『この地上に生ける神の子らよ。祈り信じよ。されば救われん』
それは教主の御言葉。
ラジオで宗教放送なんて……。