第3章 車上の戦い
「!!」
「さん!!」
兄弟の声が聞こえる。
焦ったような表情が視界に映った。
また彼らに心配をかけてしまった。
大佐やリザさんにも迷惑を掛けてしまった。
"雪女"
昔の異名が頭に浮かぶ。
昔なら、肩を撃たれたり簡単に人質になったりしなかったはずなのに。
私はいつからこんなに腑抜けになったんだろう。
深く息を吐いた。
「」
凛とした声が届いた。
大佐が優しい顔で私を見ている。
まるで何も悩むことはないと言っているような、そんな表情。
そして気付いた。
大佐の考えに。
私は、タイミングを見計らい思い切り後頭部を男の顔面に打ち付けた。
突然の衝撃に拘束が緩み即座に地面に伏せた、と同時にパチンと乾いた音が聞こえると男の身体は炎に包まれる。
「手加減しておいた。まだ逆らうというなら次はケシ炭にするが?」
今度こそ拘束された男は大佐を睨みつける。
「ど畜生め……。てめえ何者だ!!」
そう吠える男に大佐は至極冷静に、
「ロイ・マスタング。地位は大佐だ。そしてもうひとつ。"焔の錬金術師"だ。覚えておきたまえ」
そう名乗った。