第3章 車上の戦い
男たちを連行し、騒然とする駅のホームや車内の安全確認などをハボック少尉が指揮しているのを横目に、肩口からまだ流れる血に目をやる。
「エルリック兄弟、少しの間でいいので私を視界に映さないでください」
「は、なんでだよ」
心配してくれるのはありがたいけど、血を止めるために応急処置をしなければいけない。
多感な年頃の彼等に私の下着姿は刺激が強すぎる。
そう伝えれば、やはり彼らは顔を赤らめ慌てたように背を向けた。
脱いだYシャツで肩口を強く結び圧迫する。
司令部に戻ったら救護室でちゃんと手当しないと、と考えていると、急に視界が真っ暗になった。
「これを着ていなさい」
「……ありがとうございます」
決して安くないであろうコート。
汚れてしまうというのになんの躊躇もなく私に渡してくれたことに心が温かくなる。
「お待たせしました」
背を向けたままの彼等に声をかけるとおずおずと言った様子でぎこちなく振り向く。
大佐のコートに身を包んでいる私を見て、エドワードくんは怪訝な表情へとなった。
本当に、大佐のことが嫌いなんだな。
今回の事件の事情聴取と私の手当てをするために、私達は東方司令部へと向かった。