第3章 車上の戦い
そう思った時。
一人の男が私達が座っている座席に近づいてきた。
まさか何か仕掛けようとしたのがバレたのか、緊張感が漂う中、男は大きなため息を吐いた。
「……この状況でよく寝てられるな、ガキ」
男の視線の先には、椅子に横になって涎を垂らし気持ちよさそうに眠っているエドワードくんの姿が。
気が付かなかった、彼はまだ夢の中だとは。
深い眠りについているエドワードくんは銃口をつきつけられても寝息を立てるだけで起きる気配はない。
意表をつくには今がチャンス。
しかし私が行動を起こす前に、男はエドワードくんに言ってはいけない言葉を言ってしまった。
「ちっとは人質らしくしねぇか、この……チビ!!」
同時に目覚めるエドワードくん。
背後に禍々しいオーラが見えるのは私だけだろうか。
ご愁傷様です。
私は静かに手を合わせ、男の無事を願った。
エドワードくんは突きつけられた銃を両手で挟み、その先端をラッパへと変形させた。
男の驚く声と共に、エドワードくんの足蹴りが顔面に直撃し男はそのまま気を失い床に沈んだ。
その後も犯人グループが銃を向けて脅してくるも、そんなのお構いなしに暴れまくるエドワードくんは最終的に「こいつら誰?」という始末。
チビ、という単語に無意識に反応しただけでこれだけ複数人の犯人を伸してしまうなんて、本当に彼は目立つ行動が多すぎる。