第3章 車上の戦い
なにかの気配で目が覚めた。
ぼんやりとする視界をクリアにし、列車内を見渡すが新聞を読むご老人や楽しそうに談笑する子連れの親子などがいるだけで、特別変わった様子はない。
「どうしたんですか?」
時間にして数分しか眠っていない私の身体を気遣うように声をかけてくれるアルフォンスくんに静かにするように人差し指を口元へあてる。
私のジェスチャーに彼も息を潜める。
その時だった。
車両間の扉が勢いよく開き、銃を持った数人の男たちが列車を乗っ取った。
「この列車は"青の団"が乗っ取った!!死にたくなければおとなしくしろ!!」
突然の出来事に悲鳴をあげるご婦人、恐怖で泣きじゃくる子供、非常事態に男たちに怒鳴る声が車内に響くが銃口を向けられたことで、一瞬にして静まり返った。
「おまえらは人質だ」
「恨むなら軍の連中を恨めよ」
ゲラゲラと笑う男たち。
青の団、と言っていたな。
東部過激派の一派だ。
だとすると、今頃大佐たちが動いているに違いない。
何もしなくてもきっと事件は解決するだろうが、乗客を長い間拘束し危険に晒すわけにはいかない。
ここは私がどうにかしなければ。