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【鋼の錬金術師】紅の幻影

第3章 車上の戦い





眠ってしまったら夢を見てしまうから。
夢はとても怖くて恐ろしいものだから。
怖い夢は怖くて眠ることができないから。
だったら最初から眠らなければ、怖い夢を見ることもないから。

「だから、眠りたくないんです」

怖くて眠れないだなんて。
なんて子供じみた理由。
話していて恥ずかしくなってきた。

「じゃあ、僕がずっと手を握っていてあげます」

思いもよらなかった言葉に私はアルフォンスくんの顔を見た。
変わらない表情のはずなのに、心なしか微笑んでいるように見える。

「ボクも小さいとき怖い夢を見て眠れなかった時があるんです。その時、母さんがずっとボクの手を握ってくれてて。不安だったけど、いつの間にか眠ってしまって。でも、怖い夢は見ませんでした。だから、さんも怖い夢を見て眠れないなら、安心できるまでボクの手を握ってください」
「……………」
「あ、でも、これって温もりがあるから安心できるっていうのもあるのかな……?どうしよう、そうするとボクの手を握っても冷たいだけで、安心とは程遠いような……」

先ほどまで大人びたような雰囲気を纏っていたアルフォンスくんだったが、急に慌てふためいて一人でおろおろとし始めた。
その様子がとてもおもしろくて、小さく笑っていると「笑わないでください」と怒られてしまった。

「すみません。あまりにも先ほどと雰囲気が違うなと……」

一つ咳ばらいをして、私は彼の手を静かに握った。
ひんやりと冷たい彼の手はとても気持ちがよかった。

「では、お言葉に甘えさせていただきます。実は、眠たくて仕方がなかったんです」
「駅に着いたら、起こしますね」
「はい、お願いします」

そう言って、私は静かに瞳を閉じた。


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