第3章 車上の戦い
「寝てください。目的の場所に着いたら起こしますから」
「……ああ。悪い」
面を喰らったような表情をするエドワードくんだったが、横になればすぐに規則正しい寝息が聞こえ始める。
相当疲れていたんだな。
それにしても、寝ている彼の顔はなんとも幼く可愛らしい。
黙っていればモテるだろうに。
長い金色の髪の毛が列車の揺れと共にさらさらと揺れている。
それをじっと見つめていると、アルフォンスくんに声を掛けられた。
「さんも、寝なくていいんですか?」
「え?」
「兄さんもそうだけど、さんも昨日寝ていないですよね?」
「……」
「昨日だけじゃない、ユースウェル炭鉱の時だって一睡もしていないんじゃ……」
心配そうに私の顔を覗きこむアルフォンスくんの声はとても優しいものだった。
心の底から私を心配してくれているとわかる。
「………エドワードくんには内緒ですよ。余計な心配をかけたくないので」
「はい」
「眠るのが……苦手なんです」
「苦手?」
「正確に言うと、眠るのが怖いんです、とても」