第2章 炭鉱の街
嬉しそうに笑うカヤルくんは私の手を引いてテーブルに座らせた。
そしてグラスにオレンジジュースを注いで「乾杯」とグラス同士をぶつけた。
その様子を見ていた酔っぱらった大人たちはにやにやと笑っている。
「なんだ、カヤル!!嬢ちゃんのことが好きなのか⁉」
「わははっ!!見る目があるなカヤル!!嬢ちゃんはいい女だぞ!!」
「お前はあの子の何を知ってんだ!!」
わはは、と大きな笑い声が響き渡る。
酔っぱらいはもしかしたら人類最強なのかもしれない。
そんな風に思っていると、カヤルくんは勢いよく立ち上がった。
先ほどまで騒いでいた彼等はカヤルくんに視線を向ける。
エルリック兄弟2人もなんだなんだと言わんばかりにカヤルくんに目を向けていた。
「オレ!!立派な大人になっていい男になる!!」
小さな少年の決意表明に周りの大人は「おー!!いいぞー!!」と囃し立て始める。
オレンジジュースを一気飲みし、カヤル君は私の顔をじっと見つめる。
私も見つめ返すと、
「オレ、大きくなったらのことお嫁さんにするから!」
そう言って、カヤルくんは私の頬にキスを落とした。
ギャラリーは大盛り上がりしている。
私はぽかんとしたまま彼を見ると、耳まで真っ赤にして真剣な表情をしていた。
これは変にからかったら彼のプライドを傷つけてしまうな。
「……もし、カヤルくんのその気持ちが大人になっても変わらずにここに残っているなら、迎えに来て下さい」
小さな胸に指さしてにこりと笑うとカヤルくんは「約束だよ」と小指を差し出した。
その小指を自分の小指と絡ませ約束の義を契った。
周りは「宴じゃあああっ」とまた騒ぎ出した。