第2章 炭鉱の街
「おかしいですね。権利書は無償で譲ったはずですよ。念書もありますし、私も証人としてあの場にいました」
「黙れ!!この取引は無効だ!!」
権利書を取り返そうとする彼等だったが、炭鉱の人たちに勝てるはずもなく、その場でコテンパンにやられてしまった。
「あ、そうだ中尉。中尉の"無能っぷり"は上の方にきちんと話を通しときますんで」
「~~~っ!!い、いいい、いくら国家錬金術師でも一般軍人でないやつにそんな権限はない!」
エドワード君を指さしてそう言い張るヨキ中尉。
言われてみればそうかもしれない。
だが、軍人はいる。
エドワードくんとアルフォンスくんの視線が私に向けられた。
「そう言えば挨拶がまだでしたね。東方司令部所属、・アールシャナです。あなたのことは直属の上司であるロイ・マスタングに報告させていただきます」
私の言葉にヨキ中尉はサーっと血の気が引いたようで魂が抜けてしまい抜け殻のように膝から崩れ落ちた。
「親父……。エドは魂まで売っちゃいなかったよ」
「ああ、そうだな」
彼等の言葉はエドワードくんに届くことはなかった。
彼は今、炭鉱の人たちによってお酒まみれになっていたから。
「お嬢ちゃん……いや、中尉もありがとう」
深々と頭を下げるホーリングさんに私は顔をあげる様に言った。
大してお礼を言われるような事はしていない。
この街を救ったのはまごうことなきエドワードくんなんだから。