第2章 炭鉱の街
大量の金塊を私たちはヨキ中尉のいる屋敷へと運び、とあるものを手に入れることができた。
そのとあるものとは炭鉱の権利書。
エドワードくんは、金塊と引き換えに炭鉱の経営権を丸ごと買ったのだった。
しかも、金の錬成をしたことがバレないように、"経営権は無償で穏便に譲渡した"という念書にサインをするようお願いする始末。
どう見てもこれは詐欺だ。
でも、私は何も聞いていないし見ていないから何も知らない。
という体を装っている。
「中尉の事は上の方の知人にきちんと話を通しておいてあげましょう」
そう言って、エドワード君は権利書を手にすると屋敷を後にした。
「しかし、こうもうまくいくとはな」
ホーリングさんのところへと向かう途中、エドワードくんは高笑いしていて楽しそうな様子。
私とアルフォンスくんに「素敵なお兄さんですね」と皮肉交じりに言えば「本当、こんな兄を持てて幸せです」と皮肉交じりに返してきた。
「でも正直これでここの人たちが助かるのなら安いもんですね」
「相当キレてたもんな」
「あのようなやり方は気に食わないだけです。特に子供に手を挙げるような人は許せません」
そんなこと言える立場ではないとわかっている。
わかっているけど、次の世代には笑って幸せに生きて欲しいと願わずにはいられない。
そう願うことだけは許してほしい。