第2章 炭鉱の街
きっとエドワードくんはにやりと口角をあげているでしょうね。
兄弟たちの会話はちゃんと聞こえているが、あいにく私は自分の口紐に集中しているので、何を話しているのか覚えていない。
視界の端っこに映る眩い青い光を見て見ぬふりをし、錬成が終わった頃を見計らい顔をあげた。
「何かありましたか?」
「いや、なにも」
目の前に広がる違法によって錬成された金塊。
だけど私は何も見ていない。
だから何も言及することはしなかった。
「それはヨキ中尉のところへ持っていくのですか?」
「うん。あるものを売ってもらいたくてね」
「……成程。お人よしですねあなたは」
「別に。普通だろ」
"当り前をできる人はなかなかいないものよ"
なぜか、奥さんの言葉を思い出し、私は静かに笑った。
確かにその通りだな。
普通だったらなかなかこんなことをしようとは思わないし、行動に移せもしないだろう。
普通、か……。