第2章 炭鉱の街
「ぐわー!ムカつく!!」
「どっちが?」
「両方!!」
相当苛ついているのだろう、地団駄をふんで怒りを露わにする彼等の姿に、私も似たような気持ちを抱く。
想像よりも酷い現状に、こうなるまで何も知らなかった己の無能さに反吐が出る。
「っ!」
考え事をしていると、急に頭に冷たいものがふれ、驚いてそれを振りほどいてしまった。
見開いた私の瞳と、奥さんの驚いた瞳がぶつかる。
私の怪我の治療をするために冷たいタオルを当ててくれていたようだ。
「あ、すみません……。考え事をしていて……」
「こちらこそごめんなさい。驚かせてしまって……」
「いえ……」
大人しく椅子に座り、私は彼女の手当てを受け入れる。
ひんやりとしたタオルの冷たさが気持ちいい。
血は流れたものの、傷はそこまで深くないようだ。
「カヤルを、息子を助けてくださってありがとう」
「お礼を言われることは……。当たり前のことをしただけです」
「その当り前をできる人はなかなかいないものよ。本当にありがとう」
感謝の言葉を言われるのは慣れていない。
いつも非難の言葉ばかりで、だから、感謝されることがこんなに嬉しいだなんて、知らなかった。
恥ずかしさから俯いてしまうと、奥さんは優しい笑みを浮かべていた。