第1章 三人の錬金術師
「兄弟たちは明日、リオールの街に行く予定らしい。合流して護衛をするように」
「…………まさかとは思いますけど、リオールの偵察が本来の仕事だったりしますか?」
「それと、鋼のから伝言」
無視された。
「……なんですか」
「"軍服で来るな、絶対"。だそうだ」
「はぁ……」
大佐の態度を見ると、兄弟の護衛はついでのことなんだって理解した。
もっと詳しくいうなれば、リオールを偵察するように上から命令され鋼の錬金術師に頼もうとしたが、兄弟たちの行動が読めないうえ、彼のことだから報告するかどうか不安だ、なら護衛と言う名の体で軍の人間を向かわせよう、ということだろう。
「了解です」
鋼の錬金術師の伝言も受け取った。
余程軍の人間と行動するのが嫌なんだな。
午後の仕事をしながら私はふと考えた。
彼等は私の事を覚えているだろうか、と。
最期に会ったのは、3年も前だ。
彼が国家資格を取ったあの日。
会ったと言っても、会話はしていない。
遠目から彼を見ていただけ。
彼等は私の事を覚えているだろうか。
初めて会ったあの日を。
私は覚えている。
忘れられるはずもない。
同じ過ちを犯した人間。
同じ罪を背負う人間。
私と彼等は、とても、酷く、似ている。
仕事を終わらせ、家に帰ってすぐに明日の準備をした。
クローゼットの中は、軍服の予備と部屋着、そして数着の私服しか入っていない。
Yシャツ2枚、黒のパンツ1枚、厚手のコート、拳銃2丁、銃弾ケースをトランクの中に詰め込む。
何時に彼らがリオールの街に行くか分からないが、先に街には着いていたい。
報告でしか耳にしたことないが、驚くほどに彼等の行動は目立つ。
じっと待ってられない性格なんだろう。
そんなことを思いながら、私は静かに瞳を閉じた。