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【鋼の錬金術師】紅の幻影

第1章 三人の錬金術師




大佐のいる執務室をノックすると中から若い男性の声が聞こえた。
ゆっくりと扉を開けば、ニコニコと笑っている上司の姿が。

「ゆっくり眠れたかな、アールシャナ中尉」
「10分弱くらい。何か私に用事でも?」

目の前の男性、ロイ・マスタング大佐は一枚の書類を私に渡してきた。
目を通していると、大佐がどこか楽しそうな声色で尋ねてくる。

「エルリック兄弟を知っているね?」
「知っているも何も、有名じゃないですか。史上最年少の国家錬金術師だって。それに、昔―――」
「君には彼らの護衛にあたってもらう」

会った事があります。

言いかけた言葉を、大佐は遮った。

「なんでまた……」
「不服かね?」
「不服とかじゃ……。今まで護衛なんていなかったのにって疑問に思っているだけです」
「問題児だからな、鋼のは。弟だけじゃ制御できん」

それだけの理由で?
疑問はますます深まるばかりだ。

「まぁ、理由はそれでいいです。でもなんで私なんですか」
「挙げられる点は様々あるが、強いていうなら、君以外にうってつけの人間がいなかった。それだけのことだ。……言っている意味がわかるだろう?」

にやりと笑う大佐の顔を見て全てを察した。
成程、そう言う事か。
彼等の境遇も、彼等の過ちも、全てを知っている人間はごくわずかだ。
だから私に宛てがわれたんだ。


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