第2章 炭鉱の街
「ね、姉ちゃん……!!」
腕の中でカヤルくんの必死な声が聞こえるが、私はさらに彼を強く抱きしめた。
頭から血が出ているのを極力カヤルくんに知られたくなかった。
私は揺れる視界と痛みに耐えながら、ヨキ注意を睨みつける。
「子供相手に何しようとしたんですか」
いい大人がこんな幼い子供を殴ろうとするなんて。
もし、もしこの子が殴られていたら、テーブルの角に頭をぶつけていたら。
そう思うとぞっとする。
「お言葉ですが、ヨキ中尉。あなたが今やろうとしていることがどれだけ最低なことかお分かりですか?街の人たちに対する横暴な態度、子供を殴ろうとした行動。軍人だからと言って好き勝手が過ぎませんか?」
「誰に向かって口をきいている。女子供だからと言って容赦せんぞ」
床に伏せたままの私達にヨキ中尉は「みせしめだ」と言い、部下の1人に命令を下し、腰に刺している剣を取り私達に向かって振りかざした。
カヤルくんに怪我を負わせるわけにいかない。
傷付くのは自分一人でいい。
そう思った時、ガキンと金属と金属がぶつかる音が聞こえた。