第2章 炭鉱の街
その時だった。
店の扉が勢いよく開き大きな足音が複数、耳に入り込んだ。
音のする方を見ると3人の軍人がそこにいた。
「相変わらず汚い店だな、ホーリング」
「……これは中尉殿。こんなムサ苦しい所へようこそ」
「あいさつはいい」
どうやら、この広いおでことチョビ髭の男がヨキ中尉のようだ。
何しに来たのかと思えば、ホーリングさん達に「税金を滞納しているようだな」と嫌味を言いに来たようだ。
わざわざこんな夜遅くにヨキ中尉本人が出向くなんて暇人なのかと言いたくなったが、ぐっとこらえ私は様子を窺うことにした。
何かあれば、私が出ればいいだけの話だ。
「すみませんね、どうにも稼ぎが少ないもんで」
「ふん……。そのくせまだ酒をたしなむだけの生活の余裕はあるのか……。という事は給料を下げてもいいという事か?」
「それはちょっとおかしいんじゃ……」
「ふざけんな!!」
抗議の声をあげようとした私よりも早く、カヤルくん持っていた雑巾をヨキ中尉に投げつけた。
怒りにまかせてカヤルくんを殴ろうとヨキ中尉は拳を振りかざした。
咄嗟に彼を抱きしめたと同時に頬に強い衝撃が走り、バランスを崩して倒れた時、運悪く頭をテーブルに角にぶつけてしまった。