第14章 鋼の錬金術師
ふぅ、と軽く息を吐き背筋を正すと、ピナコさんがゆっくりとキセルをふかしていた。
険しい表情でピナコさんはあの日の顛末を語り出した。
「この子が血まみれで転がり込んできた後にね、あたしはこの子の家に行ったのさ」
唇を噛みしめるピナコさんを見て、私も拳を強く握りしめる。
思い出すな。
今は、まだ、思い出しちゃいけない。
「"あれ"は……、家の裏に埋葬したよ」
しかし、ピナコさんの言葉が鋭い刃になって、エルリック家で見た大量の血と、兄を錬成したときの記憶が蘇る。
「"あれ"は人間なんかじゃなかった!!あんなおそろしい物を作り出す技術なのかい、錬金術ってのは!!」
黒い塊が私を見ている。
身体を痙攣させて、獣のように唸るだけの―――化け物。
「あんたは!!またこの子らをそっちの道に引きずり込もうってのかい!!」
ああ、だめだ。
目の前が揺らぐ。
今にも倒れてしまいそうだ。
ピナコさんの叫びに、一瞬沈黙が訪れる。
そうだ。
怒るべきなのだ。
まだ、子どもである彼らを軍に渡すなど、まともな大人なら止めるべきなんだ。
ピナコさんの言うことは正しい。
けれど、私は、その正しさだけでは生きていけなかった。
私は軍に入ったことで今こうして生きることができている。
少なくとも、あのまま死なずに済んだのは中佐とヒューズさんのおかげでもある。