第14章 鋼の錬金術師
中佐はまっすぐ私を見つめる。
私もまた中佐をまっすぐ見つめ、静かに頷いた。
中佐は目を大きく見開き、すぐに眉間に皺を寄せ険しい表情を見せた。
「エルリック兄弟とやらはどこだ!」
中佐の怒号に、憲兵は「ロックベルさんの家にいるかと……」と声を震わせながら答えた。
足早にロックベルさんの家に行く中佐の背中を追いかけようとするが、足に力が入らずその場に膝をついてしまった。
頭の中で兄の声がする。
幻聴だとわかっているのに、その声はどんどん大きくなっていって、目の前が霞む。
私を心配して声を掛けようとする憲兵だったが、中佐の声に肩をびくつかせ、彼の元へと走っていく。
「立てる?」
「……はい」
「なら、行くわよ。今はあっちが優先だから」
「分かっています」
少尉が私の腕を掴んで無理やり立たせた。
まだふらついて、視界も歪んだままだったけど、無理やり足を動かす。
自分で勝手に背負った過去の罪に、勝手に呑まれて気持ち悪くなった人間に、優しさを差し出す人たちではないことはわかっていた。
だから、私は一人で立たなければいけない。
「ご迷惑おかけしました。もう大丈夫です」
喉までせりあがっていた吐き気を飲み込み、私はロックベル家へと急いだ。
その後ろで少尉が気にかけていることに気づきもしないで。