第14章 鋼の錬金術師
気が付くと、真っ白な空間にいた。
目の前には大きな扉が浮かんであって、何か模様みたいなものが刻まれている。
なんだここ。
なんの扉だこれは。
というか、さっきまでオレ、何してたんだっけ?
思い出せない。
あ……、そうだ、アル。
アルはどこだろう。
「アル?おーい、アルフォンス?」
弟の名前を呼ぶけど、姿はどこにも見当たらない。
どこにいるんだろう。
その時だった。
背後から声をかけられた。
びくりと肩を揺らし振り向くと、そこには白い影のようなものがいた。
「………誰?」
外見はのっぺらぼうというより、肌そのものがないと言えばいいのか。
この白い空間に完全に溶け込んでいて、周囲に漂う黒い靄のようなものが無かったら、おそらく肉眼では見えない。
そいつはオレの問いに嬉しそうに「よくぞ聞いてくれた」と笑った。
「オレはおまえ達が"世界"と呼ぶ存在。あるいは"宇宙"、あるいは"神"、あるいは"真理"、あるいは"全"、あるいは"一"、そして……」
そいつはオレに語り掛け、ゆっくりとした動作で指を向けてくる。
全身から汗が流れて、心臓が重たく警報を鳴らす。
「オレは"おまえ"だ」
そいつの言葉と同時に大きな扉がゆっくりと開いた。
扉の中は真っ黒な空間が広がっていて、大きな一つ目が覗いていた。
その横から、わらわらとさっきと同じ黒いものがオレに向かって伸びてくる。