第14章 鋼の錬金術師
母さんは「世の錬金術師が聞いたら卒倒するわね」って言っていた。
もしかしたらオレたちはやっちゃいけないことをしちゃったのかな。
だから母さんはさっきから困ったような顔をしているのかな。
だったら、もう錬金術は使っちゃいけないのかな。
そんなことを思っていると、母さんは優しくオレ達をだきしめ、
「さすが父さんの子ね。母さん、みんなに自慢しちゃおう」
いつもの優しい笑顔を向けてくれた。
単純な事だった。
"母さんが褒めてくれる"
たった、それだけの事が嬉しくて。
オレ達は錬金術にのめり込んだ。
父さんの書斎を散らかして怒られても。
牛乳が飲めなくても、アルとケンカしても。
錬金術を学べば、上達していけば、母さんは「凄いわね」って「流石ね」って笑っていたから、泣いたりすることもないって思ったから、だからオレ達は錬金術をずっと……。
母さんに褒めてほしかったから。
母さんの笑顔が見たかったから。
母さんが大好きだったから。
なのに、あの日。
アルと一緒に買い物から帰ったら、母さんは床に倒れていた。
今にも死んじゃうんじゃないかって思うほど苦しそうに息をしていて。
ばっちゃんに助けを求めて、お医者さんを呼んで、その時は母さんは助けったけど、母さんの容体はよくなるどころか悪くなる一方だった。
錬金術を鍛えれば、母さんは元気になってくれるって思っていた。
でも、母さんは流行り病で死んでしまった。
もう抱きしめてもらうことも。
褒めてもらうことも。
名前を呼んで笑ってくれることもない。
そんな悲しくて苦しくて寂しいことを受け入れられなくて。
オレとアルは母さんの葬式の間、ずっとずっとずっと声をあげて泣いた。
父さんは、母さんが死んでも帰ってくることはなかった。