第2章 炭鉱の街
「……っ、冷てぇ……」
「え?」
「"体温"を持って行かれました。私の平熱は31度です」
「31!?」
「それって身体的に大丈夫なんですか?」
私の身体を心配するアルフォンスくんに思わず笑ってしまった。
私なんかより魂だけの身体の方が何かと不便だろうに。
自分のことより誰かの心配するだなんて、なんて優しい人たち。
「31度と言っても、生身の人と何も変わりません。ただ、大量出血したり高熱がでたら、死ぬ可能性が人より高いということです」
「そんな、淡々と」
「大佐は、知ってんのか?あんたが人体錬成して"体温"を持って行かれたことを……」
「知っています。軍に勧誘し国家錬金術師の道を示してくれたのも大佐です」
あなた方と同じ。
「じゃあさんも国家錬金術師なんですか?」
「いいえ。それはお断りしました」
「なんでだ?」
「あなた方と違い、私は元の身体に戻りたいと思わなかったからです。戒めとして刻んでおきたかった」
だからあなた方兄弟が羨ましい。
同じ罪を背負っているからなのか、それとも"家族"という繋がりがそうさせているのか、彼等の絆はとても強い。
羨ましいと同時に嫉妬すら覚えてしまう。
私にはもう血の繋がった家族はいないから。