第13章 あんたたちの代わりに
その時、何かを思い出したパニーニャさんが「あ!」と声を上げた。
どうやらエドワードくんに銀時計を返すのを忘れていたらしい。
そう言えば、ドミニクさんのところに案内したら返すっていう約束をしていた。
私もすっかり忘れていた。
「これが国家錬金術師の証かぁ……。初めてまじまじと見たわ」
銀時計を手にしたウィンリィさんに私はくすくすと笑う。
一般の人は絶対に目にすることはない代物だから興味が湧くのは当然でしょう。
懐かしいな。
私も大佐の銀時計が気になっていたっけ。
結局「見せて」とは言えずにいたけれど。
「私も少し見てもいいでしょうか」
「見たことないの、さん。意外ー」
「ふふ。意固地にならずに見せてほしいと言えばよかったですね」
「???」
首を傾げるウィンリィさんに「ただの独り言です」と言って、彼女から銀時計を受け取る。
思ったよりもずっしりと重く、これが国家錬金術師が背負う業の重さか……。
こんなものをまだ子供の彼が背負うとは……。
いや、この考えはエドワードくんに失礼だ。
あの日の力強いエドワードくんの瞳が記憶に蘇る。
彼はわかっていて国家錬金術師になったんだから。
「ねえねえ。これ、フタが開かないんだよね」
一人感傷に浸る私の耳にパニーニャさんの声が届く。
銀時計のフタが開かないと彼女は言った。
確かに彼女のと言うとおり、フタはびくともしない。
「あいつかたくなに"開けるな"って言うだけで中に何が入ってるのやら……」
「"開けるな"?」
パニーニャさんのタレコミに反応するウィンリィさんとリドルさん。
開けるなと言われたら開けたくなる人間の心理とは恐ろしいもので、私の制止の声などもはや聞こえていない。
一体どこからだしたのか、いつの間にかウィンリィさんの手にはいくつもの工具が握られていた。