第13章 あんたたちの代わりに
私はコーヒーを近くのテーブルに置いて、パニーニャさんの前に立った。
くりっとした大きな目が更に大きくなる。
「パニーニャさん。ドミニクさんのことが大好きだというのなら、スリはやめなさい」
「え……?」
「機械鎧の相場価値がいくらなのか私は存じ上げません。ですがそう簡単に払える額ではないことは想像できます。ドミニクさんが誠意であなたに立ち上がる為の足をくれたのです。ならばあなたも誠意で応えなければいけません」
パニーニャさんは「でも……スリでもしないと払えない」と唇を尖らせた。
感謝しているからこそお金を払いたいという気持ちはわかる。
だけど、そのための手段が違う。
私は息を軽く吐いて、彼女の瞳をまっすぐに見つめた。
「あなたの気持ちも分かります。ですが、スリで儲けたお金をなぜドミニクさんが受け取らないのか考えたことはありますか」
「……ない、かも」
「犯罪だからです。そしてそのお金を受け取ってしまったらドミニクさんの善意が無駄になるからです。いいですか。あなたがドミニクさんに本当に感謝をしているなら、これからは真面目にこつこつと働いて返済しなさい。それが"感謝を伝える"ということなんです」
「……そっかぁ。そう、だよね」
パニーニャさんは自分の足を見つめる。
私の言葉がパニーニャさんに届いたのだろう。
彼女はぱっと明るい笑顔を咲かせると「地道に働いて返すよ!」と言ってくれた。
その言葉を聞けただけで十分だ。
私も笑顔でパニーニャさんを見つめた。