第13章 あんたたちの代わりに
そう思っているとサテラさんが「触ってみる?」と優しい笑顔を向けた。
どうしようかと悩んでいたけど、優しさを無下にできず恐る恐るサテラさんのお腹を手のひらでゆっくりと撫でた。
やわらかいけど内側にしっかりとした張りがあって、当り前だけど人の体温を感じて「生命」が直に伝わってきて、気を赦してしまえば泣きそうになった。
それくらい衝撃ですごくてエドワードくんが「すごい」と連呼する理由が分かった。
「"元気に生まれて来てね"って願いながら触ってあげてね」
「……そっかぁ。ボク達もこんな風に母さんのお腹の中に入ってたのかぁ……」
「なんだか不思議だな!」
「そうね。私も自分の中にもうひとつの命があるのってとても不思議に思うわ」
赤ちゃんは母親の中で280日過ごして生まれてくる、とリドルさんは言う。
誰も教えていないのに280日たつと生まれてくる、小さくてもちゃんと意思を持った命なのね、とサテラさんは言う。
ああ。
泣きそうだ。
痛い。
心が痛い。
嫌だ。
ここから逃げだしてしまいたい。
嬉しいことなのに、幸せなことなのに。
目の前にある幸せを見るたびに、自分の犯した罪の愚かさを知る。
「すみません。私、少し散歩してきます」
「あまり遠くに行かないようにね。危ないから」
「はい。ありがとうございます」
2人に頭を下げ、私は工房を後にする。
まただ。
また一人でこうやって自分を責め続ける。
誰も私を責めていないのに。
安心したいんだ。
自分を責めることで、自分を傷つけることで、自分自身を守っている。
それこそ本物の愚か者だ。
わかっているのに……。