第12章 それぞれの行く先
「大佐」
その時、ホークアイ中尉の声が後ろから聞こえた。
どうやらなかなか戻らないことを心配していたらしい。
「……まったく錬金術師というのはいやな生き物だな、中尉」
中尉が持ってきてくれた上着を受け取り、私はそう言った。
「今……、頭の中で人体錬成の理論を必死になって組み立てている自分がいるんだよ。エルリック兄弟が母親を、が兄を錬成しようとした気持ちが今ならわかる気がするよ」
「………大丈夫ですか?」
きっと私が人体錬成でもするのではないかと思ったのだろう。
中尉のまっすぐな目が私を映した。
大丈夫だ。
死んだ人間は生き返らない。
だから、大丈夫だ。
軍帽を被り、顔を上げた瞬間だった。
自分の中にこみ上げてくる何かに気が付き、咄嗟に……、
「―――いかん。雨が降って来たな」
「雨なんて降って……」
「いや、雨だよ」
こらえていたものが、私の意を反して頬を濡らす。
自分がどれだけ無力なのかを思い知らされた。
「………そうですね。戻りましょう。ここは……冷えます」
中尉の静かで凛とした声が、ゆっくりと夕焼け空へと消えていった。