第12章 それぞれの行く先
――ロイ・マスタングside――
ヒューズが死んだ。
いや、何者かの手によって殺された。
棺の中で眠る彼は随分と穏やかな顔をしていた。
ヒューズの娘はまだ死というものを理解していないのだろう。
父親が埋められる場面を見て「埋めないで」と憲兵たちに向かって言っていた。
物事を理解したとき、彼女は今日のことを思い出して何を思うのか。
それを考えるだけで、心臓を鷲掴みにされたように苦しい。
直属の部下だったアームストロング少佐は、目を覆って涙をこぼしていた。
大総統閣下も優秀な人材を亡くした悔しさからか、身体が震えている。
そうだ。
ヒューズは、いい奴だった。
お節介で暑苦しいところもあったが、それに救われている奴はたくさんいただろう。
参列した人たちの静かに泣く声が彼の人望さを物語っている。
埋葬は問題なく終わり、それぞれの思いを抱えながらみなこの場から姿を消していく。
そして誰もいなくなり、ヒューズの墓の前には私だけが一人残った
マース・ヒューズ。
墓に刻まれた名前を何度も何度も目で追っては心の中で彼の名を呼ぶ。
返事など返ってくるはずもないのに。
「殉職で二階級特進……。ヒューズ准将か……」
小さく呟いた言葉は、誰にも届かない。
「私の下について助力すると言っていた奴が、私より上に行ってどうするんだ。馬鹿者が」
煩わしいと思っていたオマエの娘自慢や惚気話がもう二度と聞けないとはな。
もう少し先だと思っていたが、こんなに早く来るとは思わなかった。
もう一度、会いたい。
もう一度、声を聞きたい。
もう一度、バカな話をしたい。
ああ、そうか。
だから、彼らは人体錬成を……。