第12章 それぞれの行く先
「なに笑ってんだよ」
「いえ、なんでもありません。ただ、ヒューズさんはバカが点くほどお人好しだな、と」
「ほんとに…………。"毎日仕事で忙しい"って言いながら、しょっちゅう見舞いに来やがんの。―――今度、セントラルに行ったら何か礼しなきゃな……」
「そうですね。きっと泣いて喜びますよ」
流れる景色に目を移し、ヒューズさんのことを思う。
人のいい笑みを零す姿が浮かんで、セントラルを出たばかりなのに、彼に会いたくなった。
今度会ったら、今まで言えなかったことを、言いたかったことを言おう。
ずっとずっと胸にしまっていた言葉を。
その時、向かい側の駅のホームにヒューズさんの姿を見つけた。
なんで?という疑問は浮かんでこなかった。
大きく手を振って穏やかに笑っているヒューズさん。
スローモーションのようにゆっくりと通り過ぎていって、慌てて窓から顔を出して小さくなっていく駅のホームを見たけど、そこには誰もいなかった。
「どうしたんだよ、」
「いえ、大丈夫です。すみません」
きょとんとするエドワードくんたちにそう答えた。
幻覚、か。
ヒューズさんのことを考えていたからかな。
思ったより私は寂しがり屋で甘えん坊な人間なんだな。
それが可笑しくて、小さく笑みを零した。