第12章 それぞれの行く先
一体、俺は、何を目にしたのだろうか。
夢でも見ているみたいだ。
こんな錬金術見たことがない。
となると、こいつは、まさか……。
「頭の回転が早いばっかりにとんだ災難だったね、ヒューズ中佐」
「おいおいカンベンしてくれ。家で女房と子供が待ってるんだ………。ここで死ぬ訳にゃいかねぇんだよ!!」
袖に隠していた小型ナイフを気づかれないように手に持ち、振り向きざまに投げようとした。
だが、それはできなかった。
「その女房を刺そうっての?」
先ほどまでロス少尉だった姿は、今は愛しいグレイシアの姿になっていたから。
俺に銃口を向けるグレイシア。
頭ではわかっている、本物のグレイシアではないと。
だが、心が、グレイシアを傷つけたくないと言う。
「ああ、でも女房よりこっちのほうがよかったりするのかな?」
「………っ!!」
錬成反応とともに変化する姿かたち。
「大好きな"パパ"を殺したって知ったら、はどんな顔をするのかなぁ」
「クソがぁ………っ」
「いい演出だろう?ヒューズ中佐」
大きく口を歪ませたは引き鉄を引いた。
乾いた音が響く中、身体に走る激痛と辺りを染める赤い液体を静かに見つめた。
冷静な頭で思うのは家族とのこと。
グレイシアと共に年を取りたかった。
エリシアの成長をずっと見守っていたかった。
のことをもっと……。
「ごめんな……」
小さな謝罪は誰の耳にも届くことなく、俺はゆっくりと瞼を閉じた。
もう二度と目を覚ますことはない。