• テキストサイズ

【鋼の錬金術師】紅の幻影

第12章 それぞれの行く先







一体、俺は、何を目にしたのだろうか。
夢でも見ているみたいだ。
こんな錬金術見たことがない。
となると、こいつは、まさか……。

「頭の回転が早いばっかりにとんだ災難だったね、ヒューズ中佐」
「おいおいカンベンしてくれ。家で女房と子供が待ってるんだ………。ここで死ぬ訳にゃいかねぇんだよ!!」

袖に隠していた小型ナイフを気づかれないように手に持ち、振り向きざまに投げようとした。
だが、それはできなかった。

「その女房を刺そうっての?」

先ほどまでロス少尉だった姿は、今は愛しいグレイシアの姿になっていたから。
俺に銃口を向けるグレイシア。
頭ではわかっている、本物のグレイシアではないと。
だが、心が、グレイシアを傷つけたくないと言う。

「ああ、でも女房よりこっちのほうがよかったりするのかな?」
「………っ!!」

錬成反応とともに変化する姿かたち。

「大好きな"パパ"を殺したって知ったら、はどんな顔をするのかなぁ」
「クソがぁ………っ」
「いい演出だろう?ヒューズ中佐」

大きく口を歪ませたは引き鉄を引いた。
乾いた音が響く中、身体に走る激痛と辺りを染める赤い液体を静かに見つめた。
冷静な頭で思うのは家族とのこと。
グレイシアと共に年を取りたかった。
エリシアの成長をずっと見守っていたかった。
のことをもっと……。

「ごめんな……」

小さな謝罪は誰の耳にも届くことなく、俺はゆっくりと瞼を閉じた。
もう二度と目を覚ますことはない。






/ 330ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp