第12章 それぞれの行く先
受話器を取り、俺はダイヤルを回す。
『はい、東方司令部』
「ロイ……、マスタング大佐につないでくれ!」
『外線からの電話はつなげない決まりになっておりまして……』
「セントラルのヒューズ中佐だ!!緊急で外からかけてる!!」
『コードをお願いします』
気持ちが急いて、交換手のマニュアル対応に苛立ちが募っていく。
悪態をつきながら、俺は自分のコードを伝える。
その時、コードをメモしていた手帳から1枚の写真が落ちてしまったことに気が付かなかった。
電話の向こうの交換手は俺の焦りなど気にも留めず、淡々と仕事をする。
普段なら真面目に仕事をしている人物と評価されるのだろうが、今は真逆だ。
こんな時までマニュアル通りの対応をするな。
コードを確認した交換手の「しばらくお待ちください」という声に「早くしろ!軍がやべえ!!」と叫んだ。
俺が知ってしまった真実、ロイに伝えなければいけないという使命、それらが頭と心を支配していたからだろう。
後ろに立つ人の気配に全く意識が向いていなかった。
「受話器を置いていただけますか、中佐」
振り返ると、拳銃を向けているロス少尉の姿がそこにあった。
なんでロス少尉が……。
まさか、奴らの仲間だったのか……。
そんな思考が一瞬にして生まれたが、それはすぐに消えた。
「ロス少尉……じゃねえな。誰だ、あんた」
「誰って……マリア・ロス少尉ですよ。病院で何度も会ってるで……」
「いいや、違う。ロス少尉は左目の下に泣きボクロがあるんだよ!」
俺の言葉にロス少尉は口元を歪めると、左目の下を人差し指で軽く叩いた。
瞬間、青い錬成反応と共に先ほどまでなかったはずのホクロが彼女の目の下に現れた。