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【鋼の錬金術師】紅の幻影

第12章 それぞれの行く先






――マース・ヒューズside――




はぁ、と何度目かの深いため息を吐いた。
今日はかわいいかわいいがエドたちとまた旅に出る日。
見送りに行きたかったが、やるべきことがあったため断念した。
たちから聞いた第五研究所での出来事を踏まえ、軍法会議所で犯罪者リストを漁っていた。
何かヒントでもあれば、賢者の石の錬成陣のことやウロボロスの入れ墨を入れたやつらのこともわかるかもしれない。
しかし、そう簡単なものではなく時間だけが過ぎていき、気付いたら外はもう暗闇に包まれていた。

今日は帰れないかもしれないな、と思っていると部下の一人がリオールの暴動がようやく治まったらしいと言ってきた。
近くにあった新聞に目を通せば、見出しには「リオール暴動、鎮静」と書かれていた。
それと同時に「死者多数」とも。
嫌になるね、幼い子供が地面に伏せて動かない姿を見るのは。
エリシアの姿が脳裏に浮かび、無意識に眉間に皺が寄った。
だけど、俺は軍人だ。
命令の一つでも下りゃ、また戦地へ赴かないかん。
嫌になるね、ほんとに。

新聞を読み続けている俺に部下は「暴動は東部だけじゃない」と言った。

「北も西も暴動だ国境線だと急ににぎやかになって。そのうち国家転覆するんじゃないですかね」

冗談っぽくいうが、確かにここ数年争いごとが絶えていない。
そう思うのも仕方ないか……。

瞬間、俺の嫌な予感が全身を駆け巡った。
外れていてほしいと願っているのに、思考はずっと「そうである」と決めつけている。
ああ、本当に。
これが事実なら、まったくもって嫌になる。









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