第12章 それぞれの行く先
次の日、エドワードくんは無事に退院した。
そのままその足で駅へと向かう私達だったけど、時折彼からの視線を感じる。
だけど、私はそれを知らない振りをし続ける。
昨日のことを引き摺っているのは彼も同じらしいけど、忘れて欲しい。
お互いに変な空気に充てられただけだ。
「どうしたのよ、エド。さっきからさんのこと見て」
「べ、別に見てねえよ」
「いーや!!見てた!!なぁに、エド。もしかしてさんのこと……」
「違いますよ、ウィンリィさん。私が怪我をしたことを引き摺っているんです。護衛対象に心配されるなど私もまだまだです」
ふふ、と笑えばウィンリィさんの意識は私へと向かい、話も恋愛話から世間話へと切り替わる。
エドワードくんを横目で見ると、拗ねたような表情をしてため息を吐いていた。
なぜそのような顔をするのだろう。
この手の話はあなたは苦手でしょう。
セントラル駅に着き汽車を待っていると、後ろから「お姉ちゃん!!」とエリシアちゃんの声が聞こえた。
振り向くと、グレイシアさんに抱っこされたエリシアちゃんと、ロス少尉、ブロッシュ軍曹、そしてアームストロング少佐がお見送りに来てくれた。
ヒューズさんは仕事の為不在だが「帰るときは電話の一本位寄越せ」と伝言を預かり、自然と頬が綻ぶ。
汽笛を鳴らし、汽車が駅に到着した。
次に会えるのはいつになるだろう。
わからないけど、また会えると思えば別れも寂しくない。
涙をたくさん浮かべるエリシアちゃんを抱きしめ、私たちは汽車に乗り込んだ。
平和ボケしていたんだ。
また会える、なんて。
そんな保証、軍人にあるわけがないのに。