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【鋼の錬金術師】紅の幻影

第12章 それぞれの行く先







しかし、いくら待てども彼からキスをされることはない。
うっすらと目を開けると、赤面してもじもじとしている彼の姿が。

「あの……さ」
「はい……」
「やっぱ、こういうのってさ……、本当にす、好きな、相手と……、じゃねぇと……その……」

直接殴られたような痛みが心臓に走った。
彼の言葉にショックを受けたのだ。
歪みそうになる表情をぐっと抑え、私はできるだけ気丈に振る舞った。

「そうですよね。普通はそういうものです。では、このことはお互いに忘れましょう」
「お、おい……!!」
「明日の準備をしておいてください。それでは」

彼の顔を、見ることができない。
傷付いた顔をしているのを見られたくない。
視界が歪む、バカ、なんで、泣くことなんて……。
彼に背を向けてこの場を逃げようとした。
でも……。

「聞けって!!」

腕を引かれて、逃げることが、叶わない。
彼の左手から伝わる熱が、とても熱くて、とても苦しい。
こんな些細なことで泣きそうになるなんて、どうかしている。
ちゃんと、しなきゃ。

重たい空気が流れる中、先に口を開いたのはエドワードくんだった。

「そうじゃ、なくて……。だから、その、オレが言いたいのは……」

腕を掴む力が強められた。
痛い、けど、嫌じゃない。

「あ、あんたが……が、いやじゃ……なきゃ、オレは…………」

思わず振り向いてしまった。
耳まで真っ赤にしたエドワードくんが、上目遣いで私を見つめる。
呼吸が浅くなっているのがわかる。
緊張、期待、混ぜこぜになった感情が一気に押し寄せてきて、処理しきれない。




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