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【鋼の錬金術師】紅の幻影

第12章 それぞれの行く先









今度こそ病室を出ようとしたのに、聞き捨てならない言葉をエドワードくんは吐いた。

「油断してっからキスされんじゃねえの。あんたって意外と隙だらけだしな」

ケケッと笑うエドワードくん。
態度が好きな子にわざと嫌がらせする子供そのものだ。
………好きな、子?
いやまさかそんなわけないだろう。
たぶんずっと一緒にいたから、仲間意識とかそういう感情で決して恋とか愛とかそういうものではないだろう。

「もういいです。不毛な会話です」

軽く息を吐いた時だった。
背中に気配を感じてゆっくりと振り返る。
そこにはさっきまでベッドに横になっていたエドワードくんがいて、まったく音がしなかったら気が付かなかった。

「ほらやっぱり」
「なにがです、か」

そう言うや否や、私の腕を取り引き寄せられた。
バランスを崩した私の足をエドワードくんは軽く蹴り上げる。
景色がぐるりと回ったと思った時には、私は床に転ばされていた。

「ほら、やっぱり隙だらけじゃん」

悪戯っ子のような笑みを見せる彼は心底楽しそうだ。
こんな簡単に倒されるなんて……。
呆然とする私の目の前にエドワードくんの左手が差し出される。
当り前のように自然とその手を握れば、勢いよく引っ張られ思ったより強い力に私の身体は順応せず、彼の胸にポスンと抱きとめられた。

「悪ぃ。勢いよすぎた」
「いえ、こちらこそ……」

顔をあげれば、目の前にはエドワードくんの顔が。
金色の瞳に私が映っているのが見えた。
息遣いもすぐ近くに聞こえて……。
あと少しでも近づけば唇がくっついてしまいそうな……。





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