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【鋼の錬金術師】紅の幻影

第12章 それぞれの行く先







「君達は信用に足る人物だと判断した。そして君達の身の安全のために命令する。これ以上この件に首を突っ込む事もこれを口外する事も許さん!!誰が敵か味方かもわからぬこの状況で何人も信用してはならん!軍内部全て敵と思いつつしんで行動せよ!だが!!時が来たら君達には存分に働いてもらうので覚悟しておくように」

最期は安心させるためなのか、頬を緩ませる大総統。
先ほどまで感じていた圧はどこにもない。
だがそれが逆に私達に緊張感を与えた。
右手で敬礼をし命令を受諾する。

その時だった。
病室の外から大総統を探す声が聞こえてきた。

「む!いかん!うるさい部下が追って来た!仕事をこっそり抜け出して来たのでな!私は帰る!」

病室の窓を開けてすたこらと逃げ出す様はまるで泥棒のように見えた。
しっかりしてそうに見えるけど、閣下も不真面目なところもあるんだなと場違いなことを考えてしまったが、多分これは私の脳が考えることを放棄した表れでもあるんだと思う。

嵐が過ぎ去った直後のような空気が病室に漂う。
言葉が出ないとはこのことだろうか。

「あれ」

なんともいえない空気の病室にウィンリィさんの声が聞こえたことで、緩和されたような気がする。
変な汗をかいた。
お風呂に入りたい。

「たのまれてた汽車のキップ買って来たよ」
「おっ、サンキュー」
「なんだ。せわしないな。ケガも治りきってなかろうに」
「いつまでもこんな消毒液臭い所にこもってられっか!明日にはここを出るぞ!」
「本当はもう2日くらいは入院していてほしいのですが……」

私のいうことを聞いてくれるわけもないとわかっているから口にはしなかった。
はぁ、と軽く息を吐けば「苦労してるな」とヒューズさんから労いの言葉をもらった。



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