第11章 鋼のこころ
「イーストシティでお前言ったよな。"どんな事しても元の身体に戻りたい"って。あの気持ちも作り物だったって言うのか?」
「…………作り物じゃない」
「そうだ。絶対に二人で元に戻るって決めたんだ。これしきの事で揺らぐようなぬるい心でいられっかよ。オレは!ケンカも心ももっと強くなるぞ!」
拳を高々を挙げるエドワードくん。
苦手な牛乳もなるべく飲むと宣言する彼に、私は思わず吹き出してしまった。
「もっともっと強くなろう」
拳と拳を突き合わせる兄弟。
こういう仲直りの仕方もあるんだなと羨ましくなったと同時に、私も昔のことを思い出した。
ケンカをしたことなどほとんどなかったけど、記憶に残る兄はいつも笑っていて「ごめんなぁ」って間延びした声で謝っていたっけ。
その後必ずホットミルクを作ってくれて一緒の布団で眠った。
懐かしい。
もうケンカすることも、顔を見ることも、名前を呼ばれることもないから、目の前の兄弟の姿が眩しく映ってしまう。
「ヒューズさん」
あまりに眩しくて目を細めていると、ウィンリィさんが口を開いた。
「やっぱり、口で言わなきゃ伝わらない事もありますよね」
「そうだな」
思う気持ちは違っていたとしても、思いやる気持ちは同じで確かなものだから。
彼らの絆が強く深い理由がそこにある。