第11章 鋼のこころ
あの後、やはりと言うべきかエドワードくんの傷口は少しだけ開いてしまった。
入院が長引くかと思ったが、"大人しく"していれば予定通り退院できるようで安心した。
ヒューズさんはエルリック兄弟と軽く会話をしたあと、「明日も来るわ」と言って病室を後にした。
「忙しいんじゃねえのかよ、あの人は」
「それほどあなたのことを気に掛けている証拠です」
「お節介だなぁ」
スカーの件やタッカーさんの件で多忙な毎日を送っているはずなのに、こうして毎日時間を見つけてはお見舞いに来るヒューズさん。
エドワードくんの言う通りお節介ではあるけど、そのお節介に救われた人間はたくさんいるのは確かだ。
「良い人ですよ、彼は」
「それはわかってるけど、忙しいなら無理に来なくも。なぁ」
「うん」
エドワードくんに賛同するようにアルフォンスくんが頷いた。
わかっていないな彼らは。
大人が子供を心配する理由なんてとても単純なこと。
そうか。
大佐やリザさんたちもこんな気持ちだったのかな
たくさん気を遣ってたくさん心配かけてたくさん手を焼かせた。
今なら大佐たちの気持ちがわかる。
「アガペー、ですね」
「何言ってんだ?」
これを愛と言わずしてなんというのか。
首を傾げる兄弟に私は小さく笑みを零した。